対話はジャズ〜前のめりな雑談から始めよう

春先からネット会議がめっきり増えた。仕事の会議はもちろん、Zoomお茶会や飲み会など、体験がある人も多いだろう。わたしも毎日のように、リアルでは会えない人と画面上で再会したり、新しく出会いを得る日々が続いている。

正直言うと、わたしはパーティーやネットワーキングなど不特定多数の集まりが、あまり好きでは無い。見ず知らずの人と、当たり障りのない雑談というのがどうも苦手なのだ。

とくに不得手なのは、悪口、自慢、人の噂話など、後ろ向きな会話だ。そんな話が展開していたら一目散に逃げる。

その反面、初めての人同士、数分話しただけで不思議と元気が出ることもある。そんなエネルギーが生まれる会話を、ここでは「対話」と呼ぶ。

エネルギーを吸い取られる不毛な会話と、逆に、ワクワクする対話の違いについて考えてみたい。そして前のめりの雑談についても。

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考えるきっかけは「ワールドカフェ」という、オンライン・イベントに参加したことだった。初対面の人と淡々と話しただけなのに、楽しくて元気がでた。

仕事の会議と違い、自主参加のイベントでは、個人的な興味や明確な目的を持つ人が集まるからだろうか、対面よりも話しやすい感さえあった。

主催者によると、25年前にアメリカで生まれたワールドカフェとは、少人数のテーブルごとカフェで雑談するように、気軽に対話できる場を創り出す手法だ。

目的は、ひとつのテーマを深めるために、参加者全員の集合知を生み出すこと。本来は対面だが、最近は、オンライン会議システムでの開催も多いらしい。テーブルの代わりに、参加者をバーチャルな小部屋に分ける機能を使う。


「雑談や説得ではなく、あるテーマに集中しオープンに聴いたり話したりしながら、アイデアを生み出す対話を経験したことがありますか?」

当日は、初めて会う人ばかり5人程に分かれ、上のお題で話すこと20分を2回、グループを変えて繰り返した。全体に戻り気づきをシェアする「収穫」のプロセスで、個人の考えを超えた大きな視点が得られるという。

グループに分かれたら自己紹介、そして雑談から、本日のお題へと話が進んだ。

空気を読みすぎると、口火を切るのが怖くなる。しばらくの沈黙……絶妙のタイミングで、ためらいがちに発言した方がいた。

「話すときに、鎧やガードを下ろすことが、難しいけど大切ですね」なるほど! と共感しながら、口火を切ってくれたことにホッとする。

自己開示することで、周りの人も安心し、本音や弱みでもオープンに話せる。能動的に参加すれば、雑談も対話への糸口になるんだ。雑談が苦手なんて、決めつけは良くないな。これまでの自分の態度を反省する。


「こんなこと言ったら相手にどう思われるかな?」

という恐れを、多かれ少なかれ皆が持つからこそ、初めに発言する人は、大きな貢献をしているのだと思う。先に弱みを見せる勇気が、場の空気を作る。対話のトーンが決まる。

参加者がちょっとずつ勇気を出し、それぞれ主体的に声を出すと、新しいエネルギーが生まれる。

このとき皆の話を真剣に聴きながら、「今の体験そのものが対話だ」と、わたしは気づく。

まるでジャズセッションだ。

リードする人があり、それを追いかける人がいる。誰かがソロを取る。別の人がベースやドラムとして、コード進行やスピード感を操り、対話の土台を支える場面もある。

アドリブで新しいモチーフを出し、視点をずらしムードを変えることもあるし、ときには、食うか食われるかのバトルの様相を帯びて、場が熱くなることもある。

「お〜そう来るか」と相手の真意や裏の想いを捉え、自分なりの解釈を投げ返す。変化球のやり取りで、ますます話が盛り上がるのは、ライブハウスのようだ。

そうやって音の粒が弾けるように、その場にいる皆の目が輝く。刺激的な対話が生まれる瞬間だ。


そんな対話の場は、どうしたら可能になるのだろう?

前提は、安心して発言できる開かれた場を一緒に創ろうという気持ち。

次に、各々が勇気を持って話すこと。

自分なりの音を出し、貢献するから、受けとるものがある。与えることで与えられる。ミュージシャンが呼吸を合わせるように、吸う息と吐く息が表裏一体であるように。

そのためには、漠然と聞いたり見たりせず、全身全霊で「聴く」こと、心を砕いて「観る」ことが要求される。

前のめりな雑談という音合わせから始まり、心躍る対話というジャズセッションが始まると、自分のものでも、他者のものでもない、新しい音楽が響いてくる。能動的に、与えることで、そこにいる皆が豊かになる。そして気持ちの良い音の響く空間、いきいきした対話の場が誕生するのだ。

最後の音が放たれ、ステージに幕が引かれたとき、参加者全員に新しい気づきがある。それが対話というジャズライブだ。


私もジャズセッションのような対話をしてみたい

対話って、実際にはどうやるの?

と思った方は

毎月第1水曜に開催中のZoomお茶会形式ワークショップ

あ〜ゆるカフェ」にご参加ください。

毎回、楽しくおしゃべりしつつ違ったテーマで対話を深めています。

Mariko Lavender-Jones